-->

2010年5月2日日曜日

天野彬:「キーワードはMotivation」

はじめまして。
Motivation Maker パートナーの天野彬です。

1986年東京都生まれ。
文化の香り漂う国立にある一橋大学で学部の4年間を過ごし、現在は東京大学大学院の一年生です。学際情報学府・情報学環というところで(変わった名称ですよね。。)、主に情報メディアの社会的利用についての研究をしています。

ここから、僕がこのMotivation Makerに携わることになった馴れ初めを少しだけお話します。

昨年11月に、東京大学 i.schoolの第三回プログラムが開催されました。テーマは「社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)をつくる」。
http://ischool.t.u-tokyo.ac.jp/programs/workshop/workshop_nov09


そこでは社会的な問題を解決することと、組織としての継続性(つまりお金をある程度工面しながら回していけるかどうか)とを両立させることが目標とされ、既存の社会的企業の成功理由などを分析しつつ、自分たちで新しい架空の企業を立案することが目的とされました。
いざワークショップが始まると、多様なバックボーンを持つメンバーたちによって様々な社会的問題点が提起されていきました。日本人は働きすぎではないか問題、情報時代の情報格差問題などなどめまぐるしく話題が飛び交い、皆がアイデアを記したポストイットがホワイトボードを埋める中多岐に渡るトピックが検討されていきましたが、各人がガツンと撃たれた一つのテーマがあります。


それが、教育問題でした。


「学力低下」「ゆとり教育」「大学生の就職難」といった言葉はメディア上で日々踊り続けますが、本当に問題なのは目先の数字の上下ではなく、教育を受ける子供達の意欲の低下なのではないか。メンバーの問題提起によって、それこそが、いま起こっている諸問題の根本的な原因なのではないかと思い至りました。
そして現にそうなのです。学力の格差は意欲の格差によってもたらされている。
社会学者の山田昌弘が言うところの「インセンティブ・ディバイド」です。

これが否応なしに進行すれば、日本の高度経済成長を支えた「一億総中流」的な学びのインフラは崩れてしまうでしょう。
そしてそういったマクロな視点のみならず、多くの個人が自分の能力を開発し活き活きと生活する可能性も消失していまいます。
やる気(モチベーション)はすべての源だからです。
もちろんそうした潮流に対して、「下の人々」はまったり毎日楽しく過ごせばOKで問題ないという意見もあります。
反論としてはありえます。そういうかたちで階級的な社会を回している国もあります。
しかし日本にその論理を直輸入することは危険でもあると僕は思っています。社会的な文脈の差異に敏感にならなくてはなりません。
それに加えて、社会が変わりつつある中で、いまある会社システムもそれと同期していた学校教育システムも機能不全を起こしている(現実から乖離している)のは多くの論者が指摘するところです。

失われつつある学びへの――もちろんそれは学校の勉強にとどまるものではありません――モチベーションをどう回復させるのか。
私たちの問題関心はここに確立されました。
Motivation Makerの名前には、こうした来歴があったのでした。
そして数多の議論を経て成された最終プレゼンテーションでは、第三回プログラム後半の講師であった炭谷先生や多数のゲストの方々に好評をいただき、プランの実施に向けて背中を押して頂きました。
MMはその後、メンバーの増員を行いつつ、横田さんを中心にミーティングを重ね実施に向けて操舵しています。

ちなみに炭谷さんは自らの理念に沿った学校「ラーンネット・グローバルスクール」を経営されており、その実践や経緯を『第三の教育』(角川書店, 2000年)にまとめています。
ぜひそちらもご一読ください。


人は教育を経ずに大きくなることはできません。少なくとも今の社会はそうなっています。
そして「教育」なるものの意味を「学校による授業課程」から、「人と人とがコミュニケーションによって交わり共に変化して行く行程」へと拡張してみるならば、私たちの誰もが生きている限り教育の只中にいるのだと考え直さざるを得ません。
(子供への)教育を変えることは、また私たち大人自身が変わることでもあるのだと僕は思っています。


ダニエル・ピンクは自著『Drive』の中で、人間をドライブさせるもの=モチベーションを三つに分類しています。

Motivation1.0=生存的欲求(お腹が空いたらパンを食べる)
Motivation2.0=合理的利得(得する/損するを計算して動く)
Motivation3.0=信念・理念(損得に関わらず自分の意志によって行動する)

そして現代社会において重要なのはMotivation3.0であると主張しています。現にいま世界を動かしている人や企業には、Motivation3.0で動いていると思わざるをえないような「熱さ」を感じます。
そしてまた「働く理由」が希薄な現代において、彼の指摘は僕の実感にとてもフィットしたものです。飛躍を恐れずに言うなら私たちの世代、そして私たちの時代に当てはまるものです。
MMは子供達のモチベーションの発掘をお手伝いする事業に取り組みますが、僕の理解ではMMの可能性はそれにとどまるものではありません。
子供を教育する側である大人たちもまたモチベーションが希薄になりがちな現代だからこそ、子供だけでなく大人もMMの対象になりうるのではないでしょうか。むしろここにおいて「大人から子供へ」という教育のベクトルが反転することだってあるかもしれない。
そして偶然の一致か、私たちMMのロゴにはその理念が表されているように僕には思えてなりません。


最近頓に思うのが、時代を創るのは大上段に構えた理論や思想そのものではなく、そうしたものに支えられた人々の実践が作っていく共感や諸効果によるのではないかと。ここに来て僕の頭の中にはあるプラグマティストの哲学者の思想が去来します。誰かが行動を起こし、その輪を広げていくことにこそ活路があるのだと思います。

MMには多種多様な能力を持った人々がいます。
同時にみなモチベーションも豊富ですが、その内実もまた一様ではないことでしょう。
しかし、唯一共通しているのは自分の力を自分以外の人達の為にも使おうとする意思を宿しているということだと僕は思います。
この約半年を過ごしてきて思うに至った一つの結論です。
そして自分自身もその恩恵を受けていると思います。
だからこそ今後自分は何を返していけるのか、このMMの取り組みの中で考えかたちにしていきたいと考えています。

ぜひこの取り組みにご注目いただきたいと願います。
そしてオープンなこの運動に、参加したり口コミで広げたり等々さまざまなかたちで読者の方々に関わっていただくことを期待しています。

(天野)

0 件のコメント: